経理で働くのに簿記資格は不要?役に立たない?

経理の仕事をしたいと思ったとき、真っ先に考えるのは簿記の勉強をすることでしょう。
簿記はどの会社の経理でも役立つ普遍的な知識であり、知らないことには仕事にならないというのが世間一般論でしょう。

ただし、経理で働くすべての人が簿記資格を持っているかというと答えはNOです。
簿記資格がなくても、大企業経理部の部長や課長を務める人もいます。

実際、簿記は経理で働くのに必要なのか?本当に役立つのか?役立たないのか?
当記事で真剣にまとめてみました。

簿記がなくても経理で働くことは可能?

総合職として入社し、営業や販売などの仕事に就いたのちに人事異動で経理になるパターンはかなりあります。

このパターンなら、簿記資格がなくても経理で働くことができます。
しかし、人事異動であっても少数精鋭の経理職で働くのは狭き門です。
以下のケースなら簿記がなくても経理に人事異動になりやすいです。

■簿記がなくても経理に異動パターン
・入社時から経理の適性を買われ、予め数年後の異動が決まっていた
・他職種で働く中で、数字への強さや事務職への適性を見出された
・経理の役職者に気に入られ、推薦された

ちなみに、希望するだけでは簿記資格なしで経理には異動できないと考えて良いでしょう。
経理の人手不足の会社ならともかく、せめてものやる気を見せる為には簿記は取らなくてはなりません。

経理に異動後に簿記取得をさせられることも!

簿記資格なしで経理に人事異動になれば、資格取得を命令もしくは推奨されることが多いです。
特に日商簿記3級レベルの基礎知識がなければ、仕事を教えるのも大変です。

ちなみに、資格取得にかかる費用(資格学校、通信教育、テキスト、受験料等)は会社負担になることもあります。
通常は土日や平日の就業後を使って簿記の勉強をしますが、中には会社の就業時間内に資格学校に通わせて貰えるケースもあるようです。

無料で簿記資格が取得できる上、給料まで貰える…これは恵まれた環境ですね。
普通なら自費でテキストを買ったり、土日に資格学校に通わなくてはならないのですから。
しかし、当然にして合格へのプレッシャーは高まります。











経理未経験者が経理に転職するなら簿記は必須

経理の仕事で活躍する上で最重要なのは簿記資格ではありません。
何よりも、経理の実務経験です。

経理未経験者は実務経験がないという大きなハンディキャップを背負いながら転職活動をすることとなります。
つまり、採用する企業側からすると「経理で働いたことのない、向いているかどうかも未知数の人材」を採用することとなります。

このハンディキャップを少しでも軽減する為には、簿記資格を取るしかありません。
経理実務経験はなくても、基礎知識、やる気、経理への適性を証明することはできます。

人気職の経理に実務未経験で転職するには、日商簿記2級は合格しておきたいところです。

日商簿記3級があれば経理業務理解がスムーズ

経理に異動、転職したての業務は以下のようなものがあります。
書類整理、伝票作成、出納帳作成、小口現金管理、経費精算…

書類整理(ファイリング、ナンバリング、スキャン等)はパート、アルバイト、派遣社員が担当することが多いです。
正社員であれば新人経理部員でもこれらの業務に専念ということはありません。

伝票作成ひとつにしても、簿記の知識がなければ理解ができません。
借方と貸方、PLとBSの違い、仕訳のルール、勘定科目などの基礎知識があるだけでも教える側はかなり助かります。

日商簿記3級レベルの知識がなければ、先輩から指導を受けても全く頭に入らないかもしれません。
これでは経理業務は務まらないといっても過言ではありません。

日商簿記2級レベルの知識はマストではない

では、経理で働くのに簿記2級の資格は必要でしょうか。
既に経理で働いているのであれば、資格を取ることはマストではないと感じます。

地道に実務経験を積めば自然と簿記2級レベルの知識が習得でき、評価されることも昇進することも可能です。

特にマストと言えない大きな理由は、工業簿記があるからです。
日商簿記2級では商業簿記(仕入活動と販売活動を基本としたあらゆる会社に共通する簿記)と工業簿記(製造業特有の材料や人件費などの原価計算を目的とする簿記)にわかれます。

製造業の経理部員として働く人以外は工業簿記は実務でほとんど使わないにも関わらず、簿記検定では商業簿記同等のウエイトを工業簿記が占めるのです。

商業簿記についてはどの会社でも実務で使うケースが多いですが、工業簿記は経理で勉強したっきり全く使わない人も多いのです。

では、最高峰である簿記1級は経理で役立つ?

日商簿記検定の最難関である1級は、2級とは大きく掛け離れた難易度と合格率となります。

■日商簿記検定1級資格データ
受験資格:なし
出題分野:合格率:約10%
必要勉強時間:約800時間
試験回数:年2回(2月、11月)

■日商簿記検定2級資格データ
受験資格:なし
出題分野:合格率:約25%
必要勉強時間:約200時間
試験回数:年3回(2月、6月、11月)

勉強時間もおよそ4倍。
しかも、簿記1級受験者の中には税理士や公認会計士志望の受験者も多く、彼らは資格浪人としてほとんど全ての時間を勉強に割いている人も多いのです。

簿記2級は働きながら・プライベートも満喫しながらスキマ時間で合格できる資格です。
しかし、簿記1級となればプライベートを犠牲にして勉強に専念しなければ合格できない資格です。

経理未経験者が簿記1級を取れば転職できる?

簿記1級合格は現役経理マンでもかなり難関で、毎日経理実務をしていても勉強せずに合格できる人は皆無でしょう。
そんな簿記1級を経理実務未経験で取得しているのはスゴイですが、不気味と言わざるを得ません。

むしろ実務経験もないクセに無駄に知識だけある頭でっかちタイプは最も嫌われます。
こんなタイプの新人経理マンが自分の部下になったらどうでしょう?厄介ですよね。

簿記2級なら経理未経験者が資格取得しているケースもあります。
学生時代に会計に関わる勉強をしていた人や、商業学校に通っていた人なども取得しています。
経理志望でなくとも、簿記はどんな仕事にも通じて役立つことから、経済学部、経営学部、社会学部の学生が取得することもあります。
また、営業職などでも取得する人もいます。

経理未経験で経理に転職したいなら簿記2級取得がベストです。
これ以上の勉強をすることはかえってマイナスになりかねません。
最大なる時間と労力の無駄になってしまいます。

簿記1級は経理で昇進に有利?

当然にして評価にもリンクし、昇進への大きな武器になるでしょう。
どの会社も、経理の役職者には簿記1級レベルの知識を期待するはずです。

しかしながら、工業簿記は全く必要ない会社もありますし商業簿記のすべての分野が実務に役立つとも言い切れません。

簿記1級は昇進への武器にはなりますが、なければ昇進できないという訳でもありません。
1,000時間以上の勉強時間を割いても挫折してしまう可能性もあります。
受験するかどうかはしっかりと検討すると良いでしょう。

経理経験者の転職に簿記1級は有利?

これは間違いなく有利になります。
日商簿記検定の資格の知名度は圧倒的です。
ベテラン経理マンでも簿記1級有資格者は少なく、転職市場において多くの会社で評価に値します。

実務経験が重要なのは当たり前ですが、転職面接ではいくらでも誤魔化しや嘘がつけます。
たとえば、「決算業務を担当」と言っても実際は一部の補佐のみに携わっただけかもしれません。

簿記1級のような資格は、経理知識を測る全国共通のモノサシのようなもの。
転職でも「高い経理知識を持っている」証明となります。
経理転職で年収アップを目指すなら簿記1級にチャレンジすると良いでしょう。

やはり、実務と資格は違うもの

経理の仕事に簿記が役立つことは断言できるものの、実務と資格は違うと思って良いでしょう。

業界や会社によっても会計ルールは異なりますし、使用している会計システムによっても変わります。

少なくとも簿記を持っているだけで即戦力ということはなく、実務経験をしっかりと積んでいくことが大切です。

簿記検定では損益計算書や貸借対照表などの会計資料を一生懸命作成しますが、実務では会計システムが自動的に作成します。
実務的に言えば、会計システムのマニュアルを把握して正しい会計資料を出力できればオッケーです。

ただし、その中身をしっかりと理解する為には簿記が必要なのです。

経理の資格は簿記がすべてではない

経理にとって最重要な資格は日商簿記検定でしょう。
しかし、すべてではありません。
他にも経理に役立つ資格は沢山あります。

税金に詳しい経理マンを目指すなら税理士の科目受験も良いでしょう。
会社の保険や資金計画に詳しくなりたければファイナンシャルプランナーなんかも役立ちます。
さらに視点を変えれば、グローバル化対応の為に英語力向上を目指し、TOEICやBATICのハイスコアを目指すのもアリです。

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【まとめ】経理は簿記の知識が必要なことには変わりなし

経理に簿記の資格が必要か?と言われると必ずしもYESとは言えません。
しかし、簿記(商業簿記)の知識が必要か?と言えばYESですね。

必ず簿記の資格を取っておきたいのは以下のケースです。

・経理実務未経験で転職で経理職を目指す人
・経理経験者の転職で年収アップを目指す人
・経理で昇進を目指し、実務経験以外の武器が欲しい人

これらのパターンなら簿記2級の資格取得をしておくと良いでしょう。

どんな資格でも実務とは異なります。
資格は使えないという訳ではなく、実務経験の不足部分を補う為の両輪関係と考えると良いのかもしれません。